魔界転生-山田風太郎とニンジャ作品の魅力-

 山田風太郎という作家をご存知でしょうか? 彼は、現在における能力バトル漫画や能力バトル物と呼ばれる小説のさきがけとなる。人物であり、さらには忍術を使って戦う忍者たちの死闘や暗躍を描いた、いわゆる忍法モノと呼ばれるジャンルの作品を、一大メジャージャンルへと押し上げた人物です。このサイトで紹介していく、『魔界転生』(「まかいてんしょう」と読む。「まかいてんせいで」はない)は、そんな山田風太郎の代表的な作品の一つで、過去の豪傑たちが甦り戦うというそのアイディアは、その後の多くの作品に影響を与えています。有名なところだと、奈須きのこという超売れっ子ゲームライターの作品である「Fate/stay night」や、他にも、カルト的人気を誇る漫画家、平野耕太先生の「ドリフターズ」や「HELLSING」にも影響は受け継がれていっています。

 更には、なんと二度も映画化された上に、漫画化も二度行われ、そのうちの一つは、『十~忍法魔界転生~』というタイトルで、月刊ヤングマガジンにて連載されており、異様なほどの好評を得ております。このサイトではそんなエンタメ小説の傑作と名高い魔界転生についてと、その作品に出てくる歴史的な登場人物、そして山田風太郎とそのメディアミックス作品について詳しく紹介していきます。

どんな話なのか?

 魔界転生がどのような話なのかを一口で説明すると、忍法「魔界転生」によって、宮本武蔵や柳生宗矩といった皆さんも御存知の大剣豪が蘇り、戦うというお話になります。実際に、この作品の肝となっているのは、そんな過去の最強人物が蘇り、戦うというアイディアで、これは少しならずとも男の子の心がまだ残っているのだとしたら、やはり心躍らざるをえないのではないでしょうか?

 もう少し詳しくあらすじを説明すると、森宗意軒という怪老人が、紀州の徳川頼宣とともに江戸幕府、徳川家光の天下を奪おうと企てて、森宗意軒自体が編み出した秘術であり、禁断の忍法である『魔界転生』によって、過去の剣豪たちを意のままに家来として生まれ変わらせていくのですが、これがまた、生前の強さに加えて、魔人としての補正がかかっているため、ただ新しい肉体になっただけでなく、生前よりも優れた技量と力を持っているという物でなのです。その甦る転生衆と呼ばれる人物も、殆どが世に名だたる大剣豪、大兵法家で、天草四郎時貞・荒木又右衛門、居合の田宮坊太郎、宝蔵院流槍術の宝蔵院胤舜、尾張柳生流の柳生如雲斎、江戸柳生流の柳生宗矩、宮本武蔵などの人物が、悪の軍門に加わってしまいます。そんな中で、森宗意軒がもう一人、魔界転生を成し遂げたかった人物である、柳生十兵衛が彼等に対抗していきます。と言っても、恐ろしいほどの力を持った敵に対して一人で真っ向勝負を仕掛けたら絶対に敵いません。そこで、時に頭を使い、時に誰かの力を借りて、凶悪かつ強靭な転生衆たちと、柳生十兵衛は戦っていく事になるということです。

元々の小説版とメディアミックス

 この魔界転生はそもそも山田風太郎の伝奇小説で、本人曰く、自分の作品の中でも特に好きな作品だと語っており、その雄大な構想と奇抜な展開によって『忍法帖シリーズ』の中でも、自他共に認める傑作となっております。元々は『おぼろ忍法帖』というタイトルでスタートし、後に、作中に登場する秘術の名を借りて魔界転生というタイトルへと変えられています。このことから、実際に1981年版が深作欣二によって制作される折には、依頼した角川春樹と深作欣二の間で、ちょっとした行き違いがあったそうです。どんな話かというと、角川春樹が山田風太郎の「魔界転生」の監督をやってほしいと頼んだところ、深作欣二は「それよりも山田風太郎なら『おぼろ忍法帖』でやりたい」と主張し、それぞれがそれぞれの作品の面白さを主張する中で、同じ話なのにと訝しがり、後に同じ作品だとわかったという逸話です。映画に関してはその後、2003年になってからCGなどの技術を用いてリメイクされています。コミックスに関していえば、全部で五回もメディアミックスされているわけですが、その中でも評価が高いのはやはり、石川賢バージョンで、これはほぼ原作とは別の話になってしまってはいるのですが、原作リスペクトが非常に強い作品で、原作者からも高い評価を得ています。またファンの間でも評価が高い一品です。そして、現在も連載が続いている「せがわまさき」氏の十 ~忍法魔界転生~も非常に評価が高く、もしも山田風太郎先生が生きていたら絶賛しただろうといえるだけの熱量を持った素晴らしい作品となっています。

魔界転生1981年版劇場版

 まず最初に劇場化されたのが、1981年で、これは主演「千葉真一」「沢田研二」監督「深作欣二」製作「角川春樹事務室」によるもので、東映から配給されておりました。英語タイトルは『SamuraiReincarnation』となっており、海外での評価も非常に高い作品となっております。ストーリー展開に関しては若干原作と違うところがあり、「男ばっかりで色気がなさ過ぎる」といった制作陣の意見から、細川ガラシャが新規キャラとして登場しております。これは原作者の風太郎自身も「まさかガラシャとは思いつかなかった」とその発想を絶賛しており、確かに作品自体にも非常に良い影響をもたらしていました。

ストーリー

 寛永十五年のキリシタン弾圧に端を発する島原の乱で、天草四郎を含む二万人のキリシタンたちが惨殺され、そのことに対して神が助けなかったことを断じ、とうとう彼は魔界の力を得て蘇ることとなります。そんな天草四郎は徳川幕府へ復讐を決意し、グリモワールを身につけて、「エロイムエッサイム我は求め訴えたり(Eloim,Essaim,frugativietappelavi)」と唱え、自らが復活したように、無念の思いを抱きながら現世を離れた武人たちを、魔界衆として引き入れていきます。細川忠興に見捨てられ、火の海に取り残された細川ガラシャ。宮本武蔵、柳生但馬守宗矩・柳生十兵衛光厳親子と女への煩悩を捨て切れずに、自殺した宝蔵院胤瞬。甲賀組頭・玄十郎が率いる甲賀衆に伊賀の隠れ里を襲われ、殺された伊賀の霧丸などといった面々が、次々と四郎の手で蘇り、暗躍していくこととなるのですが……。

キャスト

  • 千葉真一:柳生十兵衛光厳
  • 沢田研二:天草四郎時貞
  • 佳那晃子:細川ガラシャ
  • 緒形拳:宮本武蔵
  • 室田日出男:宝蔵院胤瞬
  • 真田広之:伊賀の霧丸
  • 松橋登:徳川家綱
  • 成田三樹夫:松平伊豆守
  • 大場順:柳生左門友矩
  • 島英津夫:柳生又十郎宗冬
  • 久保菜穂子:矢島局
  • 成瀬正:甲賀玄十郎
  • 中村錦司:石田上総守
  • 河合絃司:神尾備前守
  • 川浪公次郎:松平隼人正
  • 鈴木康弘:富田主膳
  • 有川正治:伊崎平内
  • 岩尾正隆:安井藤兵衛
  • 内田朝雄:酒井雅楽頭
  • 相馬剛三:阿部豊後守
  • 丘路千:堀田備中守
  • 小林将孝:戸田氏鉄
  • 角川春樹:板倉内膳正
  • 中江英生:細川忠利
  • 林三郎:水野勝成
  • 小林将孝:戸田氏鉄
  • 飛鳥裕子:甲賀くノ一
  • 鈴木瑞穂:小笠原少斎
  • 浜村純:茂左衛門
  • 東龍子:茂左衛門妻女
  • 梅沢昇:伊賀の長老
  • 犬塚弘:宗五郎
  • 秋山勝俊:与平
  • 野口貴史:彦作
  • 白川浩二郎:米十
  • 白石加代子:声
  • カルロッタ池田:霊
  • 三谷昇:旅の僧
  • 神崎愛:おつう
  • 菊地優子:お光
  • 丹波哲郎:村正
  • 若山富三郎:柳生但馬守宗矩

スタッフ

  • 製作:角川春樹
  • 原作:山田風太郎
  • 企画:角川春樹事務室
  • プロデューサー:佐藤雅夫・本田達男・稲葉清治
  • 脚本:野上龍雄・石川孝人・深作欣二
  • 監督:深作欣二
  • 撮影:長谷川清
  • 録音:中山茂二
  • 照明:増田悦章
  • 美術:井川徳道・佐野義和
  • 編集:市田勇
  • 助監督:土橋亨
  • 前進主任:長岡功
  • スチール:遠藤功成
  • 音楽:山本邦山・菅野光亮
  • 衣裳アドバイス:辻村ジュサブロー
  • 特撮監督:矢島信男
  • 協力-矢島特撮研究所、デン・フィルム・エフェクト

魔界転生2003年劇場版

 2003年の劇場版では、1981年版にて特撮を担当した矢島信男の弟子の佛田洋が特技監督を務めました。アルバイト時代に1981年度版に参加していた橋本満明も視覚効果統括として参加しています。ちなみに前作では特撮技術が十分でなかったため、ラストシーンの燃えさかる炎の中で戦う二人のシーンなども実際にガソリンを撒いて火をつけて撮影していたとのことですが、本作ではデジタル技術の底上げがあったため、1981年版では描写することができなかったシーンなどの映像化も行われています。原作における魔界転生の儀式に関しては、性的描写を行わず、女性の体が割れて魔界衆となったように描写していましたが、このシーンの描写案に関してはかなり、難航していたとのことでした。またクライマックスシーンなども従来のものとことなっていたり、さらに、島原の乱での合戦シーンなども描写されるようになっております。

ストーリー(2003年)

 島原の乱で死亡したはずの天草四郎時貞は堕天使として復活を果たすと、従者のクララお品とともに暗躍し始めます。十年ほど後になって3代将軍徳川家光の時代に、徳川幕府滅亡を志す四郎は鷹狩りに来ていた野心家の徳川頼宣を挑発し、彼に秘術を使って蘇らせた配下を見せつけます。その後、様々な人物を柳生十兵衛にぶつけますがことごとく破られ、そんな中で、とうとう天草四郎は、クララお品の体を使い、とうとう徳川家康までおも転生させることとなってしまうのでした。

キャスト(2003年)

  • 佐藤浩市:柳生十兵衛
  • 窪塚洋介:天草四郎時貞
  • 麻生久美子:クララお品
  • 長塚京三:宮本武蔵
  • 古田新太:宝蔵院胤瞬
  • 加藤雅也:荒木又右衛門
  • 中村嘉葎雄:柳生但馬守
  • 杉本哲太:徳川頼宣
  • 柄本明:松平伊豆守
  • 黒谷友香:おひろ
  • 吹石一恵:お雛
  • 高橋和也:伊達小三郎
  • 田中要次:磯谷千八
  • 麿赤兒:徳川家康
  • 浜田晃:木村助九郎
  • 國村隼:陣野佐左衛門

スタッフ(2003年)

  • 製作:「魔界転生」製作委員会(東映、角川書店、日本テレビ放送網、TOKYOFM、讀賣テレビ放送、日本出版販売、東映ビデオ)
  • 監督:平山秀幸
  • 脚本:奥寺佐渡子
  • 撮影:柳島克巳
  • 照明:杉本崇
  • 録音:松陰信彦
  • 音楽:安川午朗
  • 特殊メイク:原口智生
  • 技斗:清家三彦
  • 特撮監督:佛田洋
  • 製作協力:東映京都撮影所